被相続人の死亡から約4年半経過後に突然遺産分割調停を起こし、依頼者が被相続人の生前に同人の口座から出金した450万円を遺産に加えて計算すべきと主張する妹に対し、450万円の一部を被相続人のために使用したことを認めさせ、遺産分割調停を成立させた事例

 

依頼者 

60代男性 

 

遺産

預貯金・貴金属

 

依頼の経緯

Aさんの母親が亡くなり、子であるAさんと相手方(妹)が相続人になりました。Aさんと相手方は母親の四十九日の法要後、遺産に関する話合いの席を設けましたが、相手方の態度が原因で口論となり、遺産分割協議は成立しませんでした。その後遺産分割協議は行われませんでしたが、相手方は母親が亡くなった約4年半後に、弁護士に依頼して突然遺産分割調停を申し立ててきました。Aさんは、自分単独で調停に出席して相手方と交渉するのは難しいと判断し、当方に依頼されました。
 
 

事情

Aさんの母親には、遺産として預貯金約766万円と貴金属類数点(形見分けで相手方が調停前に取得)があり、これに加え、相続開始後にAさんの母親の介護施設の返還保証金や未払保険料等合計144万円が相続人であるAさんに支払われていました。

また、Aさんは、母親のために立て替えていた費用を返してもらうため、母親が亡くなる直前に母親の口座から450万円を出金していました。

相手方は当初、Aさんが母親の口座から母親の生前に出金した450万円の使途の回答を求めるとともに、「遺産である預貯金の半額を相手方が取得すべき。貴金属類については、財産的価値がないので遺産に含めない。」と主張してきました。

Aさんが母親の口座から出金した450万円のうち約431万円については、母親の介護施設の費用等Aさんが母親のために立て替えていた費用(立替金)の返済としてAさんが受領し、残りの約19万円は母親の葬儀費用の一部に充てたとAさんは記憶していました。また、Aさんの話によれば、相手方が形見分けで取得した貴金属類についても、財産的価値がある可能性がありました。

そこで弁護士は、Aさんが母親の口座から出金した450万円の具体的な使途について相手方に説明し、貴金属類については査定書等の時価が分かる資料の提出を相手方に求めました。また、Aさんは母親の葬儀費用等を全額負担していたため、葬儀費用等の金額を遺産から控除するよう相手方に求めました。

その結果、相手方はAさんが母親の口座から出金した450万円のうち約83万円については、立替金の返済であることを認め、遺産である貴金属類については約21万円の価値があることを認めました。

しかし、相手方は、約349万円については立替金の返済とは認めず、「葬儀費用等の相続開始後にかかった費用は全額Aさんが負担すべき。Aさんが母親の口座から出金した450万円のうち、使途が明らかな約83万円を除いた約367万円の半額(約183万5000円)については、相手方(妹)が取得すべき。」と主張し、合計約611万円を代償金として相手方に支払うよう求めてきました。

その後、Aさんが立替金の返済をしてもらったものと考えていた約431万円のうち、約160万円については、Aさんの記憶違いにより、立替金の返済ではなかったことが判明しました(実際に立て替えていたのは約271万円)。

Aさんが母親のために立て替えた費用については、資料が散逸しており、Aさんの記憶自体もあいまいになっていたため、裁判で争った場合、Aさんが母親の生前に母親の口座から出金した金額のうち、相手方が立替金として認めていない約188万円(約271万円-約83万円)全額が立替金の返済と認められず、Aさんの負担になる可能性がありました。

また、葬儀費用を誰が負担すべきかについては裁判例が分かれており、審判になった場合、喪主であるAさんが全額負担すべきという判断がされる可能性がありました。

そこで、弁護士は、Aさんの了解を得たうえで、相手方が立替金として認めなかった約188万円の半額及び葬儀費用の半額を遺産から控除し、「Aさんの母親の預貯金及び相続開始後にAさんに支払われた未払保険料等約144万円をAさんが取得する代償金として、相手方に約546万円を支払う(貴金属類は相手方が取得する。)。」という案を提示し、相手方と交渉しました。

その結果、相手方は「代償金の金額を550万円とする。」という案を提示してきました。

Aさんが早期解決を希望され、相手方の案に納得されたので、最終的にAさんが預貯金等の遺産を相続し、相手方が貴金属類及び代償金550万円を取得するという内容で調停を成立させました。